“カタカナ”表示の「アグー豚」と平仮名の「あぐー豚」が世の中にはあるということを知っておかないと価値観がわかりにくい。
また、その他のブランド豚肉の貴重性を理解して食べると、尚、一層、食事が楽しくなる。
自分が食している料理に使われている原材料がどこからやってきた豚肉なのか関心のない人に当店の良さを理解することができるだろうかという余計な想いから記事にすることにした。
ただし、中心部加熱についての不安感はある。
※原料の産地情報について消費者庁がガイドライン(現在は任意表示)を案内しています。
「外食・中食における原料原産地 情報提供ガイドライン」
↓(公益財団法人食の安心・安全財団ページへリンク)
http://anan-zaidan.or.jp/news/guideline3103.pdf
“カタカナ”表示の「アグー豚」
3人でランチタイムに訪れた。
私だけちよっと高めのメニューを選択。
理由は“カタカナ”「アグー豚」がいただけるから。
まさか岡崎市でチルドのアグー豚に出会えるとは思ってもみませんでした。
思わず聞き返した。
「あぐー豚(JA取り扱いの交配種)じゃなくて“アグー豚”ですよね。
原種系の“金アグー”」「しかもチルドですかっ」。
感激だぁ~。
沖縄(石垣島)に行った時も冷凍の交配種しか食べられなかった。
愛知県のスーパーで販売されているのはJAおきなわが商標登録した「あぐー豚」。
これは何回も購入した。
特にバラ肉の旨味が素晴らしい。
平田牧場の純系金華豚と並んで、私が嗜好する豚ブランドのツートップの一角。
↓ “あぐー豚”でも十分美味しい。
阿古(あぐー,原種沖縄島豚)
中国から沖縄に渡来した黒毛の豚で島豚(シマクヮー)。
“アグー豚“は三角形の立ち耳と大きな牙が特徴。体形は小柄ながら筋肉質。
体色は黒。沖縄在来種で、戦中~戦後に絶滅の危機に陥るも、1990年代からの保存活動により約7,000頭まで復活(原種は数百頭という説もある)。
デュロックや大ヨークシャー等の西洋種は1頭重量が約200~300kg。
対してアグー豚は約110kgで、アグー豚は重量が少ないのに飼育期間が通常の豚の1.5倍以上と長期に及ぶ。
これが味に特徴をもたらす要因の一つ。
平仮名の「あぐー」はJAおきなわ商標登録品で、在来豚アグーのオスと、LW(ランドレースと大ヨークシャーの交配種)のメスを交配させた豚が「あぐー」。
体色は原種アグーが黒に対して、交配あぐーは白に黒いマダラ模様が入る。
◇“金アグー”豚(沖縄県金武産)
“金アグー“の産地は“金武”と書いて「きん」と読む、沖縄県国頭郡金武町産。
公益社団法人 沖縄県家畜改良協会でDNA鑑定を行い、琉球在来豚「アグー」の公的証明を受けている。
鑑定済みの雄雌アグー豚から生まれるアグー純血統種。
自称ではなく公称という点も評価できるポイント。
◇鑑定済みアグー豚
・沖縄県内で飼養されているもの
・生年月日及び血統が明らかなもの
・繁殖年齢に達しているもの
・DNA調査用の耳介組織の提供が可能なもの
・沖縄アグー豚仮証明豚同士の交配により生産されたもの、沖縄アグー豚仮証明豚とアグー証明豚の交配により生産されたもの又は沖縄アグー豚証明豚同士の交配により生産されたもの
・雌の沖縄アグー豚証明の資格については、協議会で定めた基準に基づき、ミトコンドリアDNAが東洋タイプのもの
豚の旨みにこだわる金武産の金アグー豚はいろいろな特徴を持つが、その一つとして、飼料“菌体飼料+オリジナル発酵飼料“で育てられているということがあげられる。
その効果として、和牛同様に美味しさの基準値のひとつとされる“脂肪融点“が29.9~33℃の低融点で、通常の豚肉の37℃~39℃と比較して圧倒的な優位性がある(らしい)。
また、旨味成分の遊離アミノ酸が他の豚よりも多く含まれていて、脂身がさっぱりとしていてしつこくないということも特徴のひとつ。
・ヤヒコSR菌入り、ストレス緩和や体質改善、健康促進、発育増進
・もろみ(泡盛を製造する過程で発生する酒粕をリサイクル)、豚を絞る効果、肉の臭みがなくなる。
・トウモロコシの茎や種はアミノ酸の量を増やし、肉の旨みになる
・糖蜜、肉に甘みが出る。(カルシウムが多く含まれている)
★金アグーランチ2,750円。
(価格は税込、レシート価格による。以下同)
金アグー豚ロースかつ150gと金アグー豚ヒレカツ60g。
茶碗蒸し、豚汁、自家製漬物もつく。タルタルは“大葉”を選択。
気になるのはこのピンクの肉色。
赤い肉色のミオグロビンは80度以上の加熱で色が変わる。ピンク外見は加熱されていない?と思われがちだが、熱などによりミオグロビンが変性しても鉄分が酸化を引き起こす酸素や外光等と接触していなければ還元状態を維持でき、肉色である赤色のままとなる。
さらに、熱を加えても褐色化しない耐熱性の未変性ミオグロビンが存在することも、肉色で加熱状態を判別できなくしている要因となっている。
しっかりと加熱されているかの判断材料のひとつとして肉汁の色チェックがある。
肉汁の色が透明なら加熱十分で、赤い肉汁が出るようならまだ十分ではないという。
何にしても中心温度の3点測定(大量調理施設マニュアル)をしっかり実施すればより安心できるが、大量調理施設ではない個人店でそこまで要求するのは難しい。
【参考】
内閣府食品安全委員会加熱と調理「トンカツ編」
一般に豚肉は65℃の加熱で豚肉が収縮し肉汁が出てきてジューシーとなる。
さらに65℃を越えると肉質が硬化する反面、コラーゲンがゼラチン化して豚肉がやわらかくなる。
この温度帯をしっかりと熟知した豚肉料理は柔らかさと旨さを併せ持つ。
食肉の食中毒防止のための加熱温度と時間は75℃1分と言われるが、65℃の加熱ならば15分間というのが75℃1分と同等となる。
豚肉にはトキソプラズマ・サルモネラなどの寄生虫や、O157・カンピロバクターなどの細菌、E型肝炎の要因となるウイルスが存在するリスクがあるが、適正な中心温度加熱管理ができる技術力があれば、食感が柔らかく、旨味もあり、ジューシーな豚肉料理を提供できる。
もちろん、揚げ物に限らず、加熱調理終了後の余熱のことも想定しておかねばなりません。
とはいえ、当店は豚肉料理の専門店。当方のそういった不安を払拭させてくれるだけの経験則と技術力は持っていると勝手に判断し、食べ進める。
旨いっ。
今まで食べた「あぐー豚」と比較してというよりは、当店の調理技術で仕上げられた料理として「旨い」。
これは驚きだ。感動レベル。
感動を分かち合うため同行2人にもおすそ分けしたが、「価格差の分の美味しさ」とつれない感想。
原材料の美味しさを感じることができない同行者にガッカリ。食育が足りなかったか。幼稚園の頃からの食育効果絶大だった嫁いだ娘が懐かしい。
★ヘルシーヒレカツランチ1,540円
同行した妻の選択メニュー。結構、気に入った様子。
タルタルは“梅”を選択。
豚肉は県内産みかわもち豚だが、肉の厚みもあり、十分な及第点ランチ。
カツの他にささみチーズフライを1個わけてもらって食べたが、低温調理したササミを使っていることに驚く。当店のこだわりと凄みを感じた。
卓上調味料は塩(粟国)以外は自家製ということに当店の料理店としての心意気を感じる。
★ジャンボロースかつ丼ランチ1210円。
息子の選択メニュー。ご飯大盛り。240gのみかわもち豚。
肉厚な豚肉のため、大盛ご飯と相まって完食に苦労している様子。肉を一切れ食べてあげる。
ほぉ~と驚く微妙な食感。
さすがに豚肉の味は私のチョイスした“金アグー”にはかなわないが、普通のかつ丼と比較して、価格差以上の価値観を感じる。
何処からやってきた豚肉なのか気にしない人に出すのはちょっともったいないかなと思う。
グッジョブです。
★調味料その他
ランチ選択時にタルタルソースの味を聞かれる。
私は大葉で、妻は梅。
さらにテーブルには粟国の塩や味噌だれ、ソースやドレッシングも用意されている。
塩以外は自家製。
このあたりのこだわりが素晴らしい。
普段、テーブルに用意されているコショー、うま味調味料(×化学調味料)、七味・一味等を使わない私が思わずいろいろと試してみたくらいに充実。
立派です。
★デザート
ランチはデザート付きだが、息子のオーダーしたロースかつ丼はデザートがついていない。
ちょっとかわいそうなのでデザートをつけたら、ダブルバニラアイスで330円だった。
結構な値段になった。
自家製大葉シャーベットと梅のシャーベット。
まとめ
“金アグー”を食せる機会はなかなか無い。大変、貴重な店であることは間違いない。
その他、みかわもち豚,淡路島サクラマス,天草産くるま海老,北海道産野付産ホタテ貝と原材料のこだわりが幅広いのも興味深い。
さらに期間限定で夜メニューとして「岩中豚」や「白金豚」も食せるという。
白金豚はこの後、岩手県花巻市の秘湯遠征で食す予定なので、岩中豚だけは是非ともいただきたい。再訪間違いなし。※期間限定らしいので開催しているかは事前確認が必要。
もっとも、肉の評価を「柔らか~い♡」とだけしか表現できない人には銘柄豚の価値は伝わりにくいかもしれないので通常のランチで十分、満足できると思う。
いつも言うように「あなたの美味しいは私の美味しいではなく、逆もまた真」。
料理の価値・評価は当人の食体験に左右される。
今回、感心したのは産地を隠したがるまたはアピールできることしか表示しない料理店が多い中、しっかりと産地や品種を表示されていることに対して最敬礼。
良い店を見つけた。
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・Nの隠れ家
愛知県岡崎市日名北町1-1
グランドボウル1F
開店日2024/7/30
定休日(要問合せ)
営業時間
11:00-14:30 L.O 15:00閉店
17:00-20:30 L.O 21:00閉店
カウンター 6席
テーブル 4卓 (12席)
座席 2卓 (12席)
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◇中心部の肉色に関する食彩品館のX投稿より
中心部に生感が残るトンカツ。
添付の内閣府食品安全委員会による加熱肉色の比較画像を見て欲しい。(内閣府食品安全委員会資料」より。一部加工追記)
①は1分30秒加熱で②は2分30秒加熱したトンカツ。その差1分。
ここまで(上側①画像)の生感ではないがロゼ色のトンカツは普通に出会う。
2枚目のロゼ色に関しては肉汁や余熱で中心部まで加熱されているから大丈夫というのが提供側の言い分。
食肉の安全を高度に担保する調理時間と温度は中心部が63度で30分以上、もしくは 75度で1分以上の加熱が必要と保健所から指導され大量調理施設衛生マニュアルにも記載されている。
それと同等の加熱が行われた証拠が肉色が白くなっていることであると委員会は警告する。
内閣府食品安全委員会資料の加熱と調理「トンカツ編」(動画)を見ると「安全を高度に担保された調理方法」がわかる。
リスクを承知の上で「肉汁が赤くなければOK」とするか、リスクはあっても柔らかくジューシーな肉を優先するか。いやいや、やはりパサつき感はあっても安全を優先したいのか。
いずれにせよ、提供側も客側もなにがしかの了解、「例えばリスクプロファイルについて互いの確認」とか「中心温度測定表の公開」とかをするともう少し安心して食事ができる。
飲食店が食中毒保険に入っているかも確認したい。
もっとも多くの人は「そんなこと(リスク)知りたくもない」「かえって不安になる」「そもそも食中毒事故は実食数に対して非常に少ない確率」と思う人の方が多いかも。
でも「知っていて食べる」のと「知らずに食べる(食べさせている)」のでは大違い。
ちなみに私はどうするか。「これは中心部まで既定の温度で加熱されていますか?」と一応、確認してから、自分の目で見て、実際に肉汁の色をチェックしてから食べるかどうか判断しています。
以前、このようなことを言ったら「商売の邪魔だ。訴えてやろうか」と某有名シェフにすごまれたことがある。
事故は実食数に比して数少ないが、加熱不足が原因で発生していることを私は忘れないようにしている。
自身が2度とカンピロバクター食中毒(40年前発症)やノロウィルス食中毒(20年前発症)は経験したくないので。
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