自分の出汁感覚に疑問を持ってしまう。貧乏舌・馬鹿舌か?。親子月見きしめん2,400円。棊子麺茶寮 いしこん(名古屋駅前,ミッドランドスクエア)香露もあるでよ。味の司石昆。“なごやめし”ではなく“愛知めし”の理由。

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棊子麺茶寮 いしこん(名古屋駅前,ミッドランドスクエア)で親子月見きしめん2,400円実食記,

目次

きしめん起源

 “きしめん”は一説によると三河国の芋川(現在の刈谷市)発祥の「ひもかわ(平打ちうどん・ひらうどん)」と紹介されることがある。
それが隣国尾張に伝わってきしめんとして発展したという説。
今でも「きさん(刈谷市)」で芋川うどんの復刻バージョン(少し厚めのきしめん)を食すことができます。
  当店は「棊子麺」という漢字を使っていることから、別説の「碁石麺(きしめん,中国の碁石型のお菓子)」説を採用しているのかもしれません。
面白いことに「棊子麺」の語源説である「碁石麺」に似た「碁子麺」という料理が長野県木曽御嶽山麓の開田村に存在し、それは蕎麦粉を練って伸ばして方形の薄い餅のようにした料理で、きしめんの源流では?という話もある。
さらには江戸時代後半には伊勢国(三重県)に「きしめん」という名称を使った店舗が存在していたという文献記録も。
要するに定説がないものの、きしめんは愛知県の名物料理として全国に周知されている。

きしめんを“高質化”

 当方、きしめんは尾張の庶民の食べ物であり、1杯ワンコイン(500円)以内で食す料理と勝手に思っていて、戦国時代はともかく、江戸時代後の貴人(注;私ではない)がいただく料理ではないと勝手に思っていた。(料亭っぽいお店で小鉢として提供された経験はある)

 そのきしめんを高質料理(注;高級ではない)に高めたという評価が当店にはある。
高質とするためには使用原材料の高質化と調理の高度化があるが、当店のこだわりは運営会社である「石昆(いしこん)」が昆布をメインに販売する会社ということもあり、“だしが主役の飲食店”を自称されている。
すなわち、“出汁素材のこだわり”が当店のウリであると推定。

 問題は食す側がその“こだわり”と“味の高質化”を理解できるかということ。

 あまり良い印象を持たない造語だが「貧乏舌」という言葉がある。何でも美味しいと感じる人のことを指すらしい。
また、味の違いがわからない人を「馬鹿舌」というらしい。
いずれも他人の評価を見下すような表現であって、使い方に注意しなければいけない。
上記2語に対する対義語は「食通」ということでしょうか。
とはいえ、その区分には少々、疑問を持つ。
例えば、我が家でいうと娘が「貧乏舌」タイプだが、彼女は決して「馬鹿舌」タイプではない。
幼いころから私が食育して“舌”を鍛えた結果、味の良しは明確に判断できるが、悪い方は判断しないというだけ。
彼女に言わせると外食料理は「美味しい」か「より美味しい・すごく美味しい」かのどちらかという評価になる。
 私はというと、食通でも美食家でもない
いつも味にこだわりを持つような文章を書いているが、さほど料理の出来栄えの味評価には興味が無い。
興味があるのは原材料そのもの。(原材料が貴重だったり、当地まで来ないといただけない品だったりするとメチャ嬉しくなって評価点数が高くなる傾向)。
それでもいつも表現するような「原材料の旨味成分を丁寧に抽出して」とか「旨味成分の調合具合が良い」とかの感覚は実食を重ねて舌の味蕾と大脳皮質連合野の判断鍛錬を継続している。

 閑話休題(それはさておき)

ミッドランドスクエアいしこん

 当店はミッドランドスクエアの地下1階に出店にする石昆の「イートイン」の位置付け。
石混は名古屋の松坂屋と三越2店に直営店を出店し、名駅近辺ではミッドランドスクエア地下1階に出店。
石混自慢の商品群を実際に料理として食べてもらおうじゃないかということでイートインも出店。
「石混」販売コーナーの中央からイートインコーナーである「いしこん」に入店。

 メニューを見る。
名古屋駅前にあるミッドランドスクエアはトヨタ不動産・トヨタ自動車・毎日新聞社のビルで正式名称は豊田・毎日ビルディング。要するにトヨタ自動車と毎日新聞社の旧ビルを再開発で合体させたビル。
中部地方では一番高い超高層ビルでテナントも早々たる有名店が出店。
最上階付近には某世界的な有名会社が陣取る。


↓ 2006年 高層棟開業当時に進捗確認のために訪れた時の画像(TMGP提供)

 そんなビルの地下一階、エスカレーターで降りたすぐの場所に石混(イートイン「いしこん」含む)は出店している。(顔部分は修正加工させていただいてます)


 当然、家賃は場所に相応した金額となる。契約形態によっては飲食店にとって相当な負担となる。
尚且つ、“出汁素材のこだわり”があるため、利尻産を含む一等級の昆布を使ったり、名古屋コーチンの鶏ガラを使ったりしているため、原材料コストも相応に高くなっている。 
【ご参考】・北海道産昆布の等級と価格帯について(北海道利尻島で現地現物確認した記事)

▢使用原材料の説明

そのコストをカバーし、利益を安定的に産み出すために充分な売上高確保が必要。

 客数×客単価=売上。

一日の客数は繁華街とはいえ、客席数から想定するとある程度の限度があるため、売上確保のためには客単価を上げるということになる。

 提供価格は「かけ」の1,500円から「みかわ牛おろし月見」2,500円まで、使用するトッピング原材料に応じた価格設定になっている。


冒頭で記した“きしめんはワンコイン価格で食べる気軽なメニュー”ということを想定していると、当店の提供価格には少々、ビビる。
また、単品メニューとして当社の看板商品の一つである「うみゃーっ手羽」や愛知メシ(×名古屋メシ)の代表である「牛スジどて煮八丁味噌味」、「愛知県三河一色産うざく」などを“名古屋名物”としてメニュー提案。
麺メニューだけでなく、単品メニューも合わせて注文してもらうことで客単価を上げたいとするのはどこの飲食店も同様。

なごやメシではなく愛知メシ

 話は脱線するが、ここで“名古屋名物“と表示していることに対してひっかかるのは“八丁味噌”と“一色産鰻”。
八丁味噌の方について、地理的表示保護制度(GI)第49号に登録された“八丁味噌”は名古屋市にある愛知県味噌溜醤油工業協同組合であり、名古屋名物と表示しても納得がいく。(この部分【※参考】を参照されたし)
「うざく」は三重県発祥の料理だが、名古屋でも人気があるものの“名古屋メシ”というのがひっかかる。
 あらためて知ったかぶりする必要もないが、愛知県・名古屋市・名古屋商工会議所・愛知県観光協会・名古屋観光コンベンションビューローによって“なごやめし普及促進協議会”という組織が設立され、その組織が中心になって“愛知の「なごやめし」”を大々的にPR活動をしている。
ところが、“愛知の”部分が省略されてしまって“なごやめし”だけ紹介されていることで、すべてが名古屋名物であると思われてしまっている理由と推定。
ちなみに協議会のHPでは「愛知、さらに東海地域にまでおよぶ広域のご当地料理を指す」と定義されています。
だったら、“なごやめし”ではなく、“愛知めし”と表示しょうではないかというのが当サイトの結論です。
ちなみに協議会で紹介されているなごやめし22選には“うざく”は入っていない。
22選のラインナップを見ると、ほぼ名古屋中心の発想で選択されたメニューばかり。
※参考
八丁味噌」と公式に名乗れるのは有名な岡崎城から八丁離れた場所で江戸時代から製造する八丁味噌協同組合2社(まるや、カクキュー)ではなく、名古屋市にある愛知県味噌溜醤油工業協同組合
と、いうのも“八丁味噌”の登録上の正規生産地は岡崎市八丁町ではなく、愛知県全体に散らばる。
発祥地で八丁味噌を製造する「まるや」が最高裁まで登録取り消しを訴訟したが2024年3月6日に最高裁判所がこれを却下したため、2026年以降は発祥地である岡崎八丁町の2社が「八丁味噌」と自由に名乗れなくなっている(まるやは使用を継続主張)。(最高裁判断によると、製品にGI登録品との混同を防ぐ表示をするなど適切に対応すれば2026年2月以降も名称を使用できる)

 ようやく実食の話に入る。(^ー^)

★親子月見きしめん 2,400円

「本日のごはん」と「本日の一品料理」付き。


本日のごはんは「鶏ごぼうご飯」。量は“ 小“ を選択。
一品料理は“ うなぎ昆布巻き”
鶏ごぼうご飯を単品注文すると400円かかるのでセット価格の2400円はなんとなくお値打ちなのでは思えてくる。
“かけ1500円”→“生わかめ1700円・月見1700円”→“お揚げ1800円・卵とじ1800円・九条ネギ1800円”→“かしわ(鶏肉)2000円”→“親子2200円”→“親子つきみ2400円・かしわ九条ネギ2400円”といろいろな組み合わせがあるため、結構迷うが、迷った時は単価の高いメニューを注文すれば後悔はないかと思って親子月見きしめん2,400円を選択。

 まず、提供されたスープをすする。

 出汁感が希薄

高質素材を使用しているのに?
他者は出汁に感銘を受けている様子なのに?
私は馬鹿舌か?と疑心暗鬼。
当方、うま味調味料(×化学調味料)が苦手なので中華料理店症候群ではないと自覚しているし・・。

 かしわ(鶏肉)は旨い。ハーフなのか純系なのかは不明だが、名古屋コーチンのモモ肉を使用しているので味がしっかりしている。ムネ肉ではないというのが、さすがこだわり店の選択。好印象。
どうも卵とじが味の出汁感を邪魔しているように思われる。
尚且つ、名古屋コーチンの生卵もトッピングしていることも影響がある?
この卵とじと生卵の味がイマイチだったことが全体的なイマイチ感の原因かなあ。

 ここで、当店の使用原材料を確認してみると、第一級の昆布とかつおやうるめイワシなどの節系も品質にこだわっている。
気になったのは“かえし”に黒豆大豆を使っていること。上品な味には仕上がるが、きしめんにはたまり醤油が似合うように思う。
また、出汁感が希薄と感じるのは前週に東北地方を旅行し、塩分濃い目で天然原材料由来の旨味成分たっぷりの料理(ひっつみ、天然きのこ蕎麦等々)を食した影響もあるのかと思われる。
味見後にうっかり加熱しすぎて出汁を飛ばしちゃったかなあとか想像したが、そんなミスはしないと思うし・・。
毎日、味見で確認されているというから、出来上がった時は合格スープだったと推測するが・・・。
京料理の出汁感とも違うし・・・。
小鉢のとろろ昆布を投入すると、少々、旨味成分が濃くなった感。

 麺は良い。食感も味の染み込み具合もナイス。
鶏ごぼうご飯は少々堅めでイマイチ。
うなぎ昆布巻きはグッドです。
帰りに土産にしようかと思ったが1箱2,700円という売価にビビッて未購入。

 味については他者の評価と自分の評価が違うことはままあるが、今回ほど違うことがあるというのが腑に落ちない。
このままでは、本格的な出汁の味に鈍感な“馬鹿舌と思われてしまう。
一応、食に関わる仕事40年以上経験者で、調理師、食肉技師でラーメンソムリエだけど・・・。
もう一度、再チャンレンジしたいと思う。
次回の選択メニユーはトッピング無しの「かけうどん1,500円」になると思う。

◇資料

⚫️棊子麺茶寮 いしこん

店舗HP
愛知県名古屋市中村区名駅4丁目71ミッドランドスクエア 地下1階
℡052-462-9242
営業時間
 平日 11:00〜15:00(LO14:30)
   17:00〜20:00(LO19:30)
 土日祝 11:00~20:00(LO19:30)
座席数20席 予約不可

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◇きしめん実食記(一部)

2024/11/09棊子麺茶寮 いしこん(名古屋市)


2021/04/21魚魚丸平日きしめん 132円

2016/08/27住吉名古屋駅1-2番ホーム500円


2016/01/11五目きしめんよしだ麺エスカ店


2016/10/04実演三宝(岡崎市)ざるきしめん

2023/04/23きしめん住みよし名駅1・2番線


商業施設・飲食店訪問17,000店強

全国のラーメンに関する記事一覧(食彩品館がゆく)

https://wp.me/pg1kmQ-fk

うどん、そば、冷麺、焼きそば、パスタ(食彩品館がゆく)

https://wp.me/Pg1kmQ-ms

鮮魚と寿司に関する食彩品館.jp記事

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和食(ランチ含む)に関する食彩品館.jp記事

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肉類に関する食彩品館記事(食彩品館がゆく)

https://wp.me/P66ssl-6Dg

和食(魚・肉記事除く)食彩品館.jp記事

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食べログ記事一覧

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この記事を書いた人

食彩品館がゆく」は食彩品館とTMGP合同記事。
商業施設と観光。時々神社仏閣。日本温泉科学会員、日本温泉地域学会員、温泉観光士,温泉名人検定合格,温泉ソムリエ,温泉分析書マスター。研究テーマは「全国各地の温泉分析書を現地現物確認し、源泉データを温泉地別に比較。温泉地環境と温泉資源の運用方法」
ラーメンソムリエ。

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